社会保険労務士(社労士)の役割
社会保険労務士(社労士)とは、社会保険労務士法に基づく国家資格者です。
法律の言葉で言えば「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」(社会保険労務士法1条)を目的とする者を言います。
わかりやすい言葉で言えば、社会保険労務士(社労士)とは企業から依頼され労務管理を行うものという事になります。
労務管理とは「経営の効率化と人間性の尊重を併存させ調和させること」
では「労務管理」とは一体何を意味するのでしょうか?
産業革命以後、資本主義の社会において企業(資本家)は利益を追求し、獲得することが何よりの優先順位とされました。一方で労働者は利潤を生みだすための道具として過酷な労働条件のもと多くの犠牲を虐げられてきました。その結果、労働法や社会保障制度が生み出されたということを私たちは「歴史」の授業で学んでいます。
翻って現代においてもその問題は解決してはいません。経済の力なくして社会は成り立ちようがありませんが、一方でその社会の構成員として利益を受けるべきはずの人々が経済の効率化のための犠牲になってしまっては本末転倒です。
そこで戦後の日本では社会保険労務士(社労士)という国家資格を整備し、労務管理を担わせました。
このことからすれば、社会保険労務士(社労士)が担う労務管理とは現代における二つの重要な要素「経営の効率化と人間性の尊重」を「併存させ調和させること」に他なりません。
労働社会保険手続き
企業において、従業員の皆さんが安心して働ける職場環境を用意するためには労働保険(労災保険、雇用保険)、社会保険(健康保険、厚生年金)が欠かせないません。
これらの手続きを行わずにいると、従業員の皆さんの労働災害や失業、病気やケガ、あるいは定年後の年金などについて、給付を受けられない恐れが生じます。また、企業に求められる社会的責任やコンプライアンス(法令順守)の観点からも強く整備が求められます。
さらに、労働力不足の深刻な現代において、有用な人材を集めるためには労働社会保険の適切な適用・申請は不可欠なものとなっています。
しかし、労働社会保険の手続きは、長年の制度運用により複雑さを極めています。その結果、企業や経営者の皆さまの大きな負担となってるのが実情です。
さらに、年度更新や算定基礎業務は、その基礎となる賃金の定義や保険料の算出について専門的な知識が要求される上、申告額に誤りがあるとペナルティーを課されることもあります。
そこで労働社会保険の業務は社会保険労務士(社労士)に代行させることにより、企業や経営者の皆様は時間的・人的な資源を本業に向けていただく事が可能となります。
労務相談
社会保険労務士法第2条の三号に定められている通称3号業務と言われる、コンサルタント的な業務です。社会保険労務士(社労士)は各種の労務管理に関するご相談を承り、その解決を図ります。
現在の日本社会における労働現場には山のような課題が顕在しています。少子高齢化による労働力不足、最低賃金の引上げによる人件費の高騰、労働時間の規制、外国人労働者、セクハラ・パワハラ、カスタマーハラスメント、人事・評価制度、少子化対策による育児休業制度の拡充、介護と労働の両立、人材の確保・育成と労働の現場に関する問題は枚挙にいとまがありません。社会保険労務士(社労士)は労務管理のプロフェッショナルとして企業や経営者の皆さんとともに問題に取り組みます。
就業規則の作成
終業規則とは労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについ て定めた職場における規則集です。 職場でのルールを事前に定め、労使双方がそれを守ることで労働者の皆さんは安心して働くことができます。そのため就業規則は労使間の無用のトラブルを防止するという観点から非常に重要なものです。
また会社にとって就業規則は、無味乾燥なルールではなく、自分たちがどのように働き、どのように社員の皆さんと共に発展・発達していくかという会社の理念や個性を体現するものの一つでもあります。他方、会社にすべて裁量が認められるものではなく、労働者にとっての最低限の権利を保障した労働基準法の範囲内で定めらることが求められており、労働基準法の基準に達しない部分は無効とされてしまいます(労働基準法92条1項)。
せっかく作った労働基準法が無駄なものとならないためにも、その作成にあたっては労働基準法や各種の労働法に精通した社会保険労務士に是非お任せください。
給与計算
給与計算は労働時間の把握に始まり、労働基準法と各事業ごとの就業規則や協定に定められたルールに従って行います。そのため計算上の確実性だけではなく法律上の正確な知識が求められる業務です。給与計算は社会保険労務士(社労士)の独占業務(特定の資格者だけに許される業務)ではありませんが、労働基準法や就業規則に精通した社会保険労務士が代行することにより確実な給与の支給と企業の負担軽減を期待する事ができます。
助成金申請代行(助成金コンサルタントにご注意!)
国の政策として、雇用や人材の能力開発等に関する助成金があります。
助成金は事業運営の強い味方となりますが、支給を受けるためには複雑な要件を理解し、その上で煩雑な申請手続きを行う必要があります。また助成金の内容によっては一定の労働条件の変更や人事配置を支給要件として求めるものがあります。その結果一時的な金銭を受け取ることの代償として企業の運営や舵取りを大きく制限されてしまう危険性もあります。
そのため法律は助成金の申請代行手続は社会保険労務士(社労士)の独占的業務とし、企業が不利益を被らないように保護しています。近年、コロナ禍の雇用調整助成金に目をつけた無資格の「助成金コンサルタント」を名乗る人物、団体が見受けられますが社会保険労務士(社労士)でないものが社会保険労務士(社労士)のものから名義を借り受けたり、金銭的な利益を受けて社会保険労務士(社労士)に業務を斡旋することは明確に法で禁じられています(社労士法第23条の2)ので、ご注意ください。
※現在、助成金の申請代行は顧問先の企業様のみ対応させていただいております。
介護事業所指定申請
法律の条文的解釈に争いがあるものの、介護保険法に根拠をおく介護事業所の指定申請代行は行政書士ではなく、社会保険労務士(社労士)の独占業務とされています。
弊所では開業に必要な介護事業所指定申請代行から開業後のスタッフさんの労務管理まで広くお手伝いさせていただきますので、お気軽にご相談くださいませ。